一郎は未だ起こらぬ戦争で死んだ。
だが彼は生きている。
彼は過去の時間に生き、
閉ざされた意識の底に生き、
その幻は街を歩く。

私のみているあなたは幻?
あなたがみている世間は幻?
だとしたら私は。私は幻−
俺が一郎だ
−亡くなったはずの兄−
1992年6月3日〜7日
渋谷ジアンジアン

出演者
名和慶子・市田明子・宮下良子
加藤京子・森光純子・大谷秀芳
山口充・塩見文・福嶋久美子 他
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作/野上 卓  演出/中田浩二
 1993年、山村電機の社長は、よく当たると評判の四人の占い師のもとへ訪れた。
「戦争がおきる」「あんたの会社は今の532倍になる」「息子は死ぬが、あんたは悲しまない」社長は娘のサツキに、恋人“岩佐一郎”との結婚を認める条件として、一郎に一年だけ湾岸戦争に志願するよう言い渡した。
 1993年、第二次湾岸戦争中、地対空ミサイルの攻撃を受けたヘリコプターが墜落した。乗員の中でただ一人生存した“一郎は”、病院の奥深く眠り続けている。『脳死』とは一体何か。『人間の尊厳』とは? 医者達は考え、悩み続ける。
 一方岩佐家には、養子にいったはずの“山村一郎”ではなく、“岩佐一郎”として戦死広報が届けられる。
 1998年、相変わらず“一郎”は病院の奥深く眠り続けている。だが、サツキは“一郎”に会う。やがて“一郎”が街を歩き回っているという
ウワサが流れる。