1960年代中頃・・・高度経済成長期の都心近郊でもやし屋を営む「泉商店」。店主・恵五郎は妻を亡くし男手一つで一人息子の幹太を育てている。家には結婚を控えた妹の十子、大学生の弟・一彦、住み込みの従業員・村松が一緒に暮らしている。
もやし作りは寝る暇もないほど忙しく、恵五郎はしょっちゅう居眠りをしていた。そんな恵五郎を見て近所のラーメン屋の店員・九里子は何かと手伝いに来ている。家出中の村松を泉商店に紹介したのも九里子である。恵五郎は村松の名前をどうしても(松村)と呼んでしまう。かつて店で働いていた喜助も時々遊びに来ており又、亡き妻の母・とみも時折、訪れているようである。
秋…もやし小屋に練炭が入れられた。結婚を控えて、十子は買い物に忙しい。電気洗濯機や電気冷蔵庫などの新しい電化製品が次々に売り出されているからだ。もやし小屋の中で、不思議な音を聞いていた村松が一酸化炭素中毒になってしまう。村松を介抱しつつ、喜助はもやしのすばらしさを語る。
毎日、眠るまもなく働く恵五郎に、村松は事業の効率化をすすめるが「楽じゃなくても楽しいことはある」と取り合わない恵五郎。
喜助と将棋をさす村松は突然自分の名前を呼ばれて驚く。喜助の息子の名前もユキオ、将棋をさすと思い出し、誰でもユキオにされるんだと言う一彦。
静子の七回忌の日、恵五郎にお見合いの話が持ち上がる。恵五郎は乗り気ではないようだが、相手は亡き妻にそっくりだった。
死んだ娘と代わってやりたかったと話すとみ。いつかユキオと代わってあげるんだと話す喜助。一彦は最後のフィルムで喜助の写真を撮る。
恵五郎は見合いの席で居眠りばかりしていた。もやしを腐らせて自分を責める村松を『ミスじゃない、事故だ』とかばう恵五郎。そんな泉家の人たちを『優しい』と言う村松。
数日後、見合い相手の樋口八重が訪ねてきた。もやしを見せてほしいという。恵五郎が『もやしを見ていると嫌な事など綺麗さっぱり忘れられる』と話していたという。『見合いの間中、自分の顔を見ないようにしていた恵五郎を誠実な人だと思っていたが、やはり自分には男運がない』と言い、凛々しく去っていく。突然の電話が喜助の死を告げる。
喜助の通夜の夜、一彦に内定通知が届いた。恵五郎に『もやし屋をやめるな』と言う一彦。九里子を恵五郎はもやし小屋へと誘う。もやし小屋の中で不思議な音がする。もやしが成長する音だ。もやし屋を嫌っていた若き日の恵五郎に喜助が『もやしが唄っている』と教えてくれたのだという。
村松が家に戻る決心をした。村松の本当の名前は <松村幸夫>。大企業の専務だった。村松に「もやしの音」の事を話す恵五郎。
そして、十数年後。泉商店は廃業する事が決まり、もやし小屋は取り壊されようとしている。久しぶりに村松が訪ねてきた。一彦、十子も訪れ皆が顔を揃えた時、小屋の取り壊しが始まる。去ろうとする村松にとみが呟く。『みーんな、変わってしまったわねぇ。変わらないでも、よかったのにねぇ。』
第53回本公演
2005年10月26日〜30日
中野/ザ・ポケット
美術/石井強司 照明/沖野隆一 (オペレーター)新井律夫 ・岩田安宣
音響/小高朋洋 ・小林由佳
舞台監督/峰村寿彦 ・広瀬法之 ・今泉竜也 ・勝浦拓矢
演出助手/塩見 文 ・森光純子
制作/中田浩二 制作助手/宮下良子
ボイラーで沸かしたお湯と井戸水を併せてもやし好みの水を作るんです。
作/小川未玲 演出/中田浩二
配 役
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花 |
星 |
月 |
佐々木 とみ
(泉 静子・樋口八重) |
名和 慶子 |
錦 毬子 |
矢田千香子 |
| 高野 九里子 |
福嶋久美子 |
八神みゆき |
福嶋久美子 |
| 泉 恵五郎 |
大谷 秀芳 |
村田 芳幸 |
小室 努 |
| 村松 幸雄 |
野瀬 一弘 |
初瀬川 竜 |
真坂 友和 |
| 近藤 喜助 |
仁志 初 |
小高 朋洋 |
廣川 潤 |
| 泉 一彦 |
新城 健 |
和田 勇 |
勝浦 拓矢 |
| 泉 十子 |
菅野 光子 |
つたいめぐみ |
木村 友美 |
株式会社、松村電器、専務取締役、松村幸雄(さちお) ……ユキオです。
じゃあ、村松さんのことをわかってあげる方、挙手をお願いします!
もうイヤだよ。もやし作りなんて。
……恵ちゃん、こっちきてごらん。
「みーんな変わってしまったわねぇ……。
変わらないでも、よかったのにねぇ……。」
1960年代―
時代の流れの中で懸命に生き続けた
ささやかな家族が唄う……もやしの唄
「嬉しくてもやしが歌ってるんだよ」って。喜助さんがね……教えてくれたんだ。
樋口八重さん。ね?
そっくりでしょ?静子お義姉さんに。
物 語
村松さん、もっといい顔色して。
はい、チーズ。
同業者で時々いるんだよ。
眠り込んじゃってそれっきりってのが。
いつにもましてお疲れのようですね。
心を読むんだ。 はあ……。
わかったかい?ユキオ。
喜助さん、写真撮ってあげるよ。
はい!かずちゃん、まだ?
泉さんがどれほどもやしのことを
大事に思っているかは、
わかっているつもりです。
……もやし屋やめるなよ。
だって喜助さんは、もやしが大好き
だっただろ?
みーんな変わってしまったわねぇ……。変わらないでも、よかったのにねぇ……。